「内定者に入社前の課題を出してもいい?」|内定者研修の中身と、やりすぎないための線引き

    2026年10月30日

    村上 祥大

    事業推進本部 名古屋支社

    村上 祥大

      内定者に入社前の課題や研修を出すこと自体は、問題ありません。ただし、参加は本人の同意が前提で、学業が最優先です。目的は仕事を先に覚えてもらうことではなく、入社後の不安を減らすこと。おすすめは、月に1回・60分ほどのオンライン研修です。

      入社前に少しでも仕事を覚えてほしい。そう思って毎週のレポートと課題図書を出したところ、卒業研究で忙しい時期の内定者から返事が来なくなった。熱心さが裏目に出る、内定者フォローでよくある失敗です。どこまでなら出してよいのか、線の引き方を説明します。

      結論:出してもいいが、自由参加・学業優先・少なめに

      入社前の課題や研修は、3つのことを守れば出してかまいません。①参加は自由にする、②学業を最優先にする、③量は少なめにする。この3つです。

      内定から入社までは、半年から1年近くあります。その間、会社から何の連絡もないと、内定者は「本当にこの会社でよかったのか」と不安になります。課題や研修は、会社とのつながりを保ち、入社後の姿を想像してもらうきっかけになります。

      一方で、内定者はまだ学生です。卒業研究、試験、アルバイト、引っ越しの準備。入社前の最後の時間は、思っている以上に忙しいものです。課題が負担になると、内定辞退のきっかけにもなりかねません。

      そこでおすすめなのが、月に1回・60分ほどのオンライン研修です。移動がないので学業の邪魔になりにくく、同期や先輩と顔を合わせることで不安も和らぎます。入社前に基本の知識をつけておけるのも利点です。

      守ること:参加は本人の同意が前提、学業が最優先

      内定者研修への参加は、強制できません。東京都の労働相談の資料でも、学生は学業に専念すべき立場にあり、内定者が自分の意思で同意した場合に限って研修などに参加する義務がある、と整理されています。

      裁判例では、内定者が研修の取りやめを申し出たときは、会社はそれを認める必要がある、という考え方が示されています。卒業論文や試験を理由に欠席したことで内定を取り消すのは、避けなければなりません。

      お金の面にも注意が必要です。会社の指示で参加を義務づけ、時間や場所を拘束する研修は、労働時間にあたり、賃金の支払いが必要になる場合があります。

      自由参加で、参加しなくても不利益がないものは、労働時間にあたらないとされています。迷うときは、社会保険労務士や労働基準監督署に確認してください。

      やってよいこと、やりすぎなこと

      線を引く基準は、「入社後の不安を減らすものか」「学生の負担になりすぎないか」の2つです。よくある内容を、2つに分けました。

      やってよいこと

      やりすぎなこと

      職場見学や、先輩社員との座談会

      毎週のレポートや、締め切りのある課題図書

      同期になる内定者同士の交流会

      仕事にあたる作業を、給料なしでさせる

      普通免許など、入社までに取ると役立つものの案内

      平日の日中に、長時間の研修を入れる

      パソコンの基本操作など、自分のペースでできる練習

      課題の出来を評価したり、叱ったりする

      月1回・60分ほどのオンライン研修

      毎週、何時間もかかる研修

      右の列に共通するのは、学生から見て「もう働いているのと同じ」になっていることです。入社前から仕事のような負担がかかると、学生は入社後の働き方まで心配になります。

      反対に、左の列は「会社や同期を知る」「入社の準備をする」ものです。やってもやらなくても評価には関係しないと伝えたうえで、案内します。

      中身の決め方:入社後の不安を減らすものを選ぶ

      何を出すか迷ったら、入社1〜2年目の先輩に「入社前に知っておきたかったこと」を聞きます。返ってくる答えが、そのまま内定者研修の中身になります。

      たとえば「3年後、5年後に自分が何をしているのか分からず、このままでいいのか迷った」なら、入社後3年間の育て方の流れと、先輩社員がどう成長してきたかの例を渡す。「専門用語が分からず、会議の話についていけなかった」なら、社内でよく使う言葉の一覧や、業界の基本が分かる参考書を渡す。「誰に何を聞けばいいか分からなかった」なら、名前と顔写真、担当する仕事をまとめた社員の一覧を渡す。「社用車の運転に慣れていなかった」なら、普通免許を早めに取るよう案内する。

      先輩のつまずきをもとにした中身は、内定者にとっても「やっておく意味」が分かりやすいものです。年末年始の帰省の前には、家族に渡せる会社の資料を渡しておくのも、内定者の安心につながります。

      配属先や入社後の研修の予定も、決まり次第、早めに伝えます。「入社して最初の1か月は、何をするのか」が分かるだけで、内定者の不安は大きく減ります。課題を増やすより、情報を先に渡す方が効くことも多いのです。

      出し方:月1回・60分のオンライン研修と面談をセットにする

      研修は、月に1回・60分ほどをオンラインで行います。たとえば最初の10分で近況を話し、次の30分で会社や仕事の基礎を学び、最後の20分は先輩社員に質問する時間にします。基礎の中身は、業界の仕組み、社内でよく使う言葉、ビジネスメールの書き方などです。

      日時は、平日の夜や土曜の午前など、授業と重ならない時間にします。参加できない回は録画を見られるようにし、見なくても評価には関係しないと伝えておきます。

      研修とは別に、月に1回は一人ずつ面談で近況を聞き、「研修や課題、負担になっていない?」と確かめます。

      面談では、課題の出来よりも学生の近況を聞きます。卒業研究の進み具合、試験の予定、アルバイト。特に単位の状況は必ず聞いておきます。内定者フォローで一番のリスクは、内定辞退より「卒業できないこと」だからです。

      忙しい時期だと分かったら、課題を減らすか、いったん止めます。「今は学業を優先して大丈夫。落ち着いたらまた声をかけるね」と伝えるだけで、学生は会社を信頼できる相手だと感じます。その一言が、どんな課題より強い内定者フォローになります。

      まとめ

      • 入社前の課題や研修は、自由参加・学業優先・少なめの3つを守れば出してかまわない。目的は入社後の不安を減らすこと。

      • 参加は本人の同意が前提。取りやめの申し出は認める。参加を義務づけて拘束する研修は、賃金が必要になる場合がある。

      • 職場見学、座談会、交流会、免許やパソコン練習の案内はよい。毎週のレポート、無給の作業、長時間の研修、評価や叱責はやりすぎ。

      • 中身は、入社1〜2年目の先輩に「入社前に知っておきたかったこと」を聞いて決める。配属や研修の予定は早めに伝える。

      • おすすめは月1回・60分ほどのオンライン研修。授業と重ならない時間に行い、録画も用意する。

      • 月1回の面談で近況と負担を確かめ、忙しい時期は課題を減らすか止める。単位の状況は必ず聞く。

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      この記事の著者

      村上 祥大

      事業推進本部 名古屋支社

      村上 祥大

      グローバル展開する大手アパレルブランドにて、店舗マネジメントを担当。 その後、営業コンサルティングを行う株式会社Empower Xにて、福利厚生SaaSや年商約100億円規模のオフィス移転事業の売上創出とマーケティングを支援。 目標比150%という圧倒的な成果を挙げ、その実績が評価され社内表彰を受ける。 株式会社VOCO入社後は、住宅エネルギー、農業、自動車販売、建設など幅広い業界の採用支援に携わる。BtoC・BtoB双方の現場で培った実行力と、最新の採用市場・学生動向への知見を武器に、採用計画の設計から実行までを一貫して担う。 現在は名古屋支社を拠点に、現場感のある採用支援を推進している。

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