「初任給、いくらにすればいいですか?」|中小企業が新卒の給与を決めるときに見る3つのこと

    2026年10月29日

    村上 祥大

    事業推進本部 名古屋支社

    村上 祥大

      中小企業が新卒の初任給を決めるときは、世の中の相場、先輩社員とのバランス、学生への見せ方の3つを見ます。金額だけで勝負しようとすると、大手との比べ合いになります。内訳と「何年目にいくらになるか」まで見せると、金額の差があっても選ばれやすくなります。

      「よそはいくら出しているのか」「上げたいけれど、先輩社員より高くなってしまう」。新卒採用を始める社長から、こうした相談を受けます。説明会で学生から多く出る質問の一つが初任給なので、決め方は早めに固めておきたいところです。

      結論:相場・社内のバランス・見せ方の3つで決める

      初任給は、外と内と見せ方の3つから決めます。外は世の中の相場、内は社内の給与との釣り合い、見せ方は学生にどう伝えるかです。どれか1つだけで決めると、人が採れないか、先輩社員が不満を抱えるか、どちらかの問題が起きます。

      見ること

      確かめる内容

      使う資料

      ①世の中の相場

      同じ地域・同じ業種の会社がいくら出しているか

      国の統計、ハローワークの求人、ナビサイトの求人

      ②社内のバランス

      2〜3年目の社員と給与が逆転しないか

      社内の給与表

      ③学生への見せ方

      内訳、賞与、何年目にいくらになるか

      求人票、説明会の資料

      順番は①から③です。相場を知ってから社内と照らし合わせ、最後に伝え方を整えます。金額を決めてから先輩との逆転に気づくと、決め直しになります。

      決める時期は、求人票を出す前、説明会の資料を作る前です。募集を始めてから金額を変えると、すでに応募した学生と後から応募した学生で条件が違ってしまいます。採用の準備を始める最初の段階で、社長と総務で決めておきます。

      見ること1:世の中の相場を知る

      まず、大学卒の新卒にどのくらいの給与が出ているかを知ります。厚生労働省の令和7年の調査では、大学卒の新卒の賃金は男女計で26万2,300円でした。令和6年は24万8,300円だったので、1年で約1万4,000円上がっています。

      ただし、これは全国の平均です。地域や業種、会社の規模によって差があります。自社の目安を決めるときは、同じ地域・同じ業種の求人を10社ほど見てください。ハローワークの求人やナビサイトの求人で、初任給と内訳を並べると、相場の幅が見えてきます。

      あわせて、最低賃金も確かめます。固定残業代を含めて金額を出している場合は、基本給の部分を時給に直して、地域の最低賃金を下回っていないかを見ます。初任給の総額が高く見えても、ここで引っかかることがあります。

      見ること2:先輩社員との逆転を防ぐ

      初任給を上げるときに見落としやすいのが、先輩社員との釣り合いです。新人の給与が2〜3年目の社員とほとんど変わらない、あるいは上回ってしまうと、先輩は「頑張ってきた意味がない」と感じます。採用はうまくいっても、今いる社員が辞めては本末転倒です。

      初任給を上げるなら、2〜3年目の社員の給与もあわせて見直します。社内の給与表を年次ごとに並べ、初任給を上げたときに順番が逆転しないかを先に確かめてください。全員を一度に上げるのが難しければ、何年かに分けて差を戻す計画を立てます。

      先輩社員には、見直しの理由を先に説明しておきます。新しい初任給を求人票で知った社員が不満を持つ前に、採用のために初任給を上げる。あわせて、既存社員の給与も○月に△円引き上げる』と具体的に伝えると、社員の納得を得やすくなります。」

      見ること3:金額より「中身」と「この先」を見せる

      学生は初任給の総額を比べますが、総額だけでは会社の違いが分かりません。同じ25万円でも、固定残業代が含まれているかどうかで中身は変わります。内訳を分けて見せると、学生は正しく比べられます。

      伝えるのは、基本給と手当の内訳、賞与の実績、固定残業代があるならその時間と金額、そして入社3年目・5年目にいくらになるかです。固定残業代は、手当の名称、何時間分でいくらか、超えた分は追加で支払うことの3つをそろえて書きます。

      給与の内訳や昇給の見通しまで公開すると、他社と比べて不利になるのでは、と心配になるかもしれませんが、実際には逆で、条件を公開している会社の方が、説明会や面接で給与の話に時間を取られず、仕事の話に集中できます。

      説明会では、たとえば「初任給は24万円です。内訳は基本給22万円と住宅手当2万円で、残業代は別に支払います。3年目の先輩は、資格手当がついて27万円ほどです」のように話します。数字が具体的だと、学生は自分の暮らしを思い描けます。

      金額を上げられないときに伝えること

      相場に届かなくても、伝えられることはあります。家賃補助や社宅、資格手当、昇給の実績、残業の少なさ。手取りや暮らしに関わる事実を並べると、総額の差は小さく見えてきます。

      たとえば「初任給は相場より1万円低いが、家賃補助が月2万円ある」「残業が月10時間ほどなので、時間あたりに直すと見劣りしない」。地元で実家から通える会社なら、それも学生や家族にとっては大きな安心につながります。

      大事なのは、事実だけを伝えることです。良い面だけを並べると、入社後に「聞いていた話と違う」となります。低い部分は低いと認めたうえで、その分ほかで何があるかを伝えます。

      まとめ

      • 初任給は、世の中の相場、社内のバランス、学生への見せ方の3つで決める。順番は相場から。

      • 厚生労働省の令和7年の調査では、大学卒の新卒の賃金は男女計26万2,300円。同じ地域・業種の求人10社ほどで幅を確かめ、最低賃金も確認する。

      • 決める時期は、求人票を出す前、説明会の資料を作る前。募集の途中で変えない。

      • 初任給を上げるなら、2〜3年目の社員の給与もあわせて見直し、逆転を防ぐ。先輩には理由を先に説明する。

      • 内訳、賞与の実績、固定残業代の時間と金額、3年目・5年目の給与まで見せる。

      • 金額を上げられないときは、家賃補助や昇給の実績、残業の少なさなどを事実で伝える。

      よくある質問

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      この記事の著者

      村上 祥大

      事業推進本部 名古屋支社

      村上 祥大

      グローバル展開する大手アパレルブランドにて、店舗マネジメントを担当。 その後、営業コンサルティングを行う株式会社Empower Xにて、福利厚生SaaSや年商約100億円規模のオフィス移転事業の売上創出とマーケティングを支援。 目標比150%という圧倒的な成果を挙げ、その実績が評価され社内表彰を受ける。 株式会社VOCO入社後は、住宅エネルギー、農業、自動車販売、建設など幅広い業界の採用支援に携わる。BtoC・BtoB双方の現場で培った実行力と、最新の採用市場・学生動向への知見を武器に、採用計画の設計から実行までを一貫して担う。 現在は名古屋支社を拠点に、現場感のある採用支援を推進している。

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